変圧器向けの板金筐体製造|熱対策、塗装まで

変圧器における筐体の役割

変圧器は電力の電圧を変換するための重要な機器であり、発電所から工場・オフィス・家庭に至るまで、電力インフラを支える要となっています。変圧器内部には、コアやコイルなどの繊細な部品が収められ、それらを外部環境や衝撃から保護する役割を担うのが筐体です。

特に産業用の変圧器は、高電圧・大電流を扱うため、筐体には強度・耐久性・放熱性・防塵防水性能など、多岐にわたる厳格な仕様が求められます。本記事では、板金加工を用いた変圧器の筐体製造に焦点を当て、求められる仕様や素材、加工工程などを詳しくご紹介します。

変圧器の筐体に求められる仕様

強度・剛性

変圧器は運転中に振動が発生するほか、設置場所によっては外部からの衝撃を受けることもあります。例えば、工場内では重機の稼働や床振動、屋外では地震や台風の強風など、様々な要因が筐体に負荷をかけます。
 そのため、筐体には十分な強度・剛性が必要です。具体的には、適切な板厚やリブ(補強材)の配置、堅牢なフレーム構造を設計に盛り込むことで、歪みやねじれを抑え、長期間安定した使用を可能にします。

放熱・冷却機能

変圧器は運転時に鉄損・銅損によって熱を発生させます。過度な温度上昇は機器寿命の低下やトラブルを引き起こす原因となるため、放熱・冷却機能は不可欠です。

  • 筐体の外装に放熱フィンを追加する
  • 内部に通気孔やファンを設けてエアフローを確保する
  • コアやコイルの配置を工夫し、熱だまりを防ぐ
     など、設計段階から綿密にシミュレーションを行うことが重要です。

防塵・防水性

変圧器が設置される環境は屋内だけとは限りません。屋外に設置される場合や粉塵の多い工場内など、汚れや水分が侵入しやすい過酷な現場も珍しくありません。
 隙間や開口部にはシーリング処理、ドア部にはパッキンを取り付けるなど、防塵・防水性を高めるための対策を講じます。IPコードで定められる保護等級に準拠した筐体設計を行うことで、内部部品の故障リスクを大幅に低減させることができます。

メンテナンス性

変圧器は長寿命機器である一方、定期的な点検や部品交換が欠かせません。筐体を開閉・分解しやすく設計し、メンテナンス性を確保することも大切です。

  • 点検扉や操作口を設置しておく
  • ケーブル取り回しやタップ切替スイッチへのアクセスを良好に保つ

上記のような工夫が、トータルコストの削減や運用効率の向上につながります。

筐体によく用いられる材質

素材の選定

  • 冷延鋼板(SPCC)/熱延鋼板(SPHC)
     加工性が高く、比較的安価なため、多くの産業用筐体に用いられます。塗装やメッキで防錆・防食を施すのが一般的です。
  • ステンレス鋼(SUS304・SUS430など)
     耐食性や美観が求められる場合に使用されます。沿岸部や食品工場など、錆のリスクが高い環境に適しています。
  • アルミ
     軽量化や放熱性を重視する場合に検討されます。強度を出すための設計ノウハウや溶接技術が必要で、コスト面では鉄材より高い傾向があります。
  • 亜鉛メッキ鋼板(SECCなど)
     材料に亜鉛メッキが施されているため、防錆性が向上します。屋外設置や腐食環境下でも比較的安定して使用できるのが特徴です。

サイズと板厚

変圧器の容量や用途によって、筐体の大きさは大きく異なります。小型では数十センチ四方、大型では数メートルクラスになることもあり、その設計や板厚の選定は綿密な強度計算によって行われます。

  • 一般的には1.0~3.0mm程度の板厚が主流
  • 大型の変圧器では、4.0mm以上の板厚を用いる場合もある

厚すぎると重量やコストが増え、薄すぎると強度不足になるため、設計段階で試作やシミュレーションを繰り返しながら最適化を図ります。

内部部品について

変圧器用の筐体の内部には、コアやコイル、タップ切替スイッチ、ブッシング(絶縁碍子)などの電気部品が収められています。これらの部品の中には高電圧が通るものもあるため、特に安全性と絶縁性の確保が重要です。

内部のレイアウトを検討する際は、部品間に十分な間隔をもたせ、配線の取り回しや点検作業が円滑に行えるよう工夫することが求められます。また、振動や衝撃に弱い部品も少なくないため、筐体に取り付ける際には防振材やクッションを適切に用いて固定し、不要な振動や外力から部品を守ることが大切です。

さらに、配線処理の段階では、ケーブルや端子部が埃や水分を溜め込まないよう配慮するとともに、放熱を阻害しないルートを確保することが欠かせません。

熱発生への対処方法

変圧器は内部損失による熱が発生しやすいため、筐体設計では熱対策が大きなテーマとなります。

  • 通気孔・排気口の設置
     自然対流やファンによる強制対流を促すため、適切な位置やサイズで開口部を設けます。
  • 放熱フィン・ラジエータの追加
     外装にフィン状の部品を取り付けて表面積を拡大し、熱を逃がしやすくします。
  • ファンやクーラーの導入
     大型の変圧器や高出力機器には、温度センサーと連動してファンが稼働する仕組みを取り入れる場合もあります。
  • 内部スペースの確保
     部品が詰め込みすぎになると熱がこもりやすいので、空気の流れを遮らないレイアウトが大切です。

設置する環境について

変圧器の設置場所は多岐にわたります。設計段階から環境条件を考慮し、必要な対策を講じなければなりません。

屋外設置
 屋根構造や防水性を高めた設計、日光による熱や紫外線対策が必要です。風雨や雪への配慮、塩害地域であればステンレスや防錆処理の強化なども検討します。

粉塵・塩害地域
 化学工場や沿岸部のように、粉塵や塩分が筐体の腐食を促す環境では、ステンレスや亜鉛メッキ材に加え、塗装のグレードを高めるなどの配慮が重要です。

防爆エリア
 爆発性ガスや可燃性粉塵がある危険場所では、防爆規格に適合した構造を採用し、電気的・構造的な安全性を徹底します。

筐体への塗装(表面処理)

変圧器筐体を長期にわたり安全に使用するためには、サビや腐食を防止する塗装・表面処理が欠かせません。

  • 溶剤塗装(液体塗装)
     一般的な塗装方法であり、厚膜化や色のバリエーションが豊富です。屋内外問わず幅広く採用されています。
  • 粉体塗装(パウダーコーティング)
     静電気を利用して粉末塗料を付着させ、高温焼付けで硬化させる方法です。耐久性・耐候性が高く、屋外で使用する変圧器筐体に特に向いています。
  • メッキ処理(亜鉛メッキ・クロメート処理など)
     防錆性を向上させるため、溶融亜鉛メッキや電気亜鉛メッキを行う場合もあります。材質によっては亜鉛メッキ鋼板を使用し、その上に塗装を施すことでさらなる耐候性を得ることが可能です。
  • 化成処理
     アルミ用のアルマイトや酸化皮膜処理など、素材ごとに適した表面改質技術を選択します。

塗装色は企業のイメージカラーや現場の保安ルールに合わせて選ぶことが多く、耐候性の高い仕上げを施すことで屋外設置にも耐え得る筐体になります。


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